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2022.03.30
税金 法律

新築するなら今がチャンス!?令和4年度税制改正のメリット・デメリット

令和4年度税制改正のメリットやデメリット

目次

 

 

令和4年度の不動産に関する税制改正は、従来の改正内容が相変わらず延長となっているものも多数ありますが、一方で近年稀にみる大きな改正内容も盛り込まれております。

ここ数年は東京オリンピックへの期待や住宅ローンの低金利も後押しして、新築・中古共に取引数は伸びており、また取引価格も都心部を中心に上がり続けている状況です。
また、2050年カーボンニュートラル(脱炭素化)の実現に向け、この施策を不動産市場へ浸透させる目的もあるため、省エネ住宅に対する特例措置の延長は順当と言えます。

今回の税制改正が今後どのように不動産取引及び税金負担に影響を及ぼすのか、新築に関連する部分を中心に解説してみます。

令和4年度税制改正で住宅ローン利用の場合は住宅ローン控除などにどう影響するか

住宅ローン利用での影響

まず注目するべき点として住宅ローン控除制度が大きく変わり、今回の不動産関連税制改正の中で一番大きな改正内容です。
また、認定住宅の所得税額の特別控除にも改正事項が出ています。

大枠では、制度適用期間が令和5年12月31日まで2年間延長されたこと、適用対象住宅にZEH水準省エネ住宅が追加されたことになります。
なお、省エネ基準適合住宅は対象外です。

では、住宅ローン控除について、まずはご覧ください。

住宅ローン控除制度の見直し

住宅ローン控除は、一定の条件を満たせば所得税が控除される制度で、所得税から控除しきれない場合は住民税からも控除が受けられます。

本制度の歴史は古く、その前身である1972年の住宅取得控除制度を経て、1978年から存在している税制です。
1999年には最大控除額が587万5000円にも及びました。
幾度となく改正を重ねてきましたが、今回の改正では控除率や控除限度額および適用条件である所得要件が縮小されています。

そんな中でも、カーボンニュートラル実現への期待として、認定住宅や省エネルギー関連住宅は差別化され優遇されています。
中古住宅についても築年数要件の緩和等、一部拡大される改正もありますが、本稿では新築について記載しておりますので割愛致します。

 

 

改正前

改正後

ローン控除率

1%

0.7%

ローン控除限度額

4000万円(一般住宅)

5000万円(認定住宅)

3000万円(一般住宅)

4000万円から5000万円

(認定住宅等の種別による)

床面積

40㎡以上

40㎡以上

適用者の所得要件

3000万円以下

   40㎡以上50㎡未満は

   1000万円以下

2000万円以下

40㎡以上50㎡未満は

1000万円以下

対象認定住宅等

認定長期優良住宅

認定低炭素住宅

認定長期優良住宅

認定低炭素住宅

ZEH水準省エネ住宅

省エネ基準適合住宅

所得税から税控除しきれない場合は、翌年の住民税から残額を控除できますが、その限度額は、

  • 課税総所得金額×7%
  • 136,500円

 

のいずれか少ない金額です。

その他、留意事項としましては、

  • ローン控除の適用期間は13年間(既存住宅は10年間で終了)
  • 住宅ローンは償還期間10年以上が対象
  • 2024年(令和6年)からは控除限度額と控除適用期間が縮小
  • 所得要件を満たさない年は控除が受けられない
  • 住宅取得日から6か月以内に居住すること
  • 併用住宅の場合は床面積の1/2以上が住宅用であること
  • 床面積は登記簿記載面積

 

といったことが挙げられます。

認定住宅の投資型(自己資金)減税

認定住宅を新築した場合、標準的な性能強化費用相当額(45,300円/㎡)と建物床面積に応じて所得税が最大65万円控除される制度です。
控除しきれない場合は翌年の所得税額からも控除することが出来ます。

住宅ローン控除と異なり、主に自己資金のみで購入する場合に適用可能なしくみと言えます。

ただし適用されるためには、下記の適用条件「6つを全て満たす」ことが必要です。

  1. 認定長期優良住宅または認定低炭素住宅もしくはZEH水準省エネ住宅を新築または取得
  2. 適用する年の合計所得金額が3000万円以下
  3. 新築または購入後6か月以内に入居
  4. 登記簿の床面積が50㎡以上
  5. 床面積の1/2以上が自己の居住用
  6. 入居年と前2年間・後3年間の計6年間に居住用財産の譲渡所得の課税の特例を受けていない

 

注意事項としては、

  • 住宅ローン控除との併用は不可
  • 控除期間は居住年のみ(控除しきれない場合は翌年に繰り越し控除)
  • 住民税の控除はない

 

といったところです。

令和4年度税制改正は住宅取得時の印紙税や登録免許税、不動産取得税にどう影響するか

住宅取得時の影響

住宅を取得した際には様々な税金が発生しますが、これらも改正されています。
従来の軽減税率が延長されると共に、新たな規定が盛り込まれました。

これらの税制でも認定住宅等にはメリットがあることに注目です。

印紙税の税率の特例措置

不動産の売買契約書や建築請負契約書は課税文書であるため、契約金額に応じた印紙税の納付が義務付けられています。

今回の改正では、建築工事請負契約書及び不動産譲渡契約書に係る印紙税を軽減する特例措置の適用期間が令和6年3月31日まで2年間延長されました。

一般的に取引されることが多い金額の範囲を、例として掲載しておきます。

 

本則

軽減特例措置

1千万円超~5千万円以下

2万円

1万円

5千万円超~1億円以下

6万円

3万円

1億円超 ~ 5億円以下

10万円

6万円

認定住宅等であっても同様の扱いです。

登録免許税の税率等の特例措置

不動産を取得した際に法務局へ登録(登記)するための税金です。
実際にはこの他、司法書士への報酬費用も掛かります。

住宅用家屋に係る登録免許税を軽減する特例措置の適用期間が令和6年3月31日まで2年間延長されました。

ここでも認定住宅には優遇措置のメリットがあります。

登記の種類

本則

軽減特例措置

所有権の保存登記

0.4%

一般住宅0.15%

認定長期優良住宅・認定低炭素住宅は0.1%

所有権の移転登記

2.0%

一般住宅0.3%

認定長期優良住宅0.2%

認定低炭素住宅0.1%

抵当権の設定登記

0.4%

0.1%

抵当権の設定登記は債務額(住宅ローン借入額)に対して税率計算します。
保存登記は注文住宅などを新築した場合、所有者が最初に登記するものです。

ちなみにZEH水準省エネ住宅と省エネ基準適合住宅の保存登記の軽減税率は0.15%と一般住宅レベルになります。

なお令和4年4月1日より、書面申請の場合でもインターネットバンキング、クレジットカードによる納付も可能となりました。

不動産取得税の税額等の特例措置

不動産を取得したことへの課税です。

住宅を取得した場合の不動産取得税を軽減する特例措置の適用期間が、令和6年3月31日まで2年間延長されました。
内容としては、土地・建物ともに軽減税率3%(本則4%)で、税計算する際に課税標準額から1,200万円を控除できます。

なお認定長期優良住宅の場合、控除額は100万円アップの1,300万円です。

土地の軽減額に関しては、税額の計算結果に対して、

  • 45,000円(税額45,000円未満はその金額)
  • 土地の1㎡あたりの価格×住宅床面積の2倍(200㎡が限度)×税率3%

 

いずれか大きい金額となります。

令和4年度税制改正は固定資産税などにどう影響するか

引き渡し後の影響

不動産を取得すると、土地・家屋に対して毎年、固定資産税と都市計画税が課税されます。
どちらも自治体から納税額が通知される保有税です。

固定資産税の税額の特例措置

新築住宅に係る固定資産税が軽減される特例措置の適用期間が、令和6年3月31日まで2年間延長されました。

軽減額

1/2に減額

適用期間

一般住宅:3年間

認定長期優良住宅:5年間

適用期間の経過後は税額が倍になりますが、本来の税額に戻るだけで増税ではありません。

なお、土砂災害特別警戒区域内で、都市再生特別措置法に基づく市町村長による適正な立地を促すための勧告に従わずに建築された、一定の住宅は軽減対象外です。
つまり、危険性の高い場所で土地の開発、建物の建築に関しては軽減対象外ということを示しています。

固定資産税に関しては、ここ数年の地価上昇による急激な税負担の増加を緩和するために、土地の負担調整措置という制度があります。

地価が上昇した際、納税者の税負担を配慮し、課税標準額の上昇幅を評価額の5%にするという負担調整措置が取られておりますが、令和4年度の改正では一部変更されました。

現行

改正

評価額の5%増加

商業地に限り評価額の2.5%増加に抑制

地価が上昇すると、通常、商業地が大きく影響を受けるのですが、それに対する配慮です。
但し、適用は令和4年度限りとなりますので、参考までに掲載しました。

新築の住宅および認定長期優良住宅の固定資産税減額措置

改正の内容は、固定資産税額を1/2に減額する期間の適用を、2年延長するというものです。

減額される期間は、

  • 一般住宅:3年間
  • 認定長期優良住宅:5年間

 

ではありますが、注意すべきは認定低炭素住宅には適用されない点になります。

以上、住宅に関することですが、土地にも固定資産税の減額措置があります。

  • 小規模住宅用地(200㎡まで):評価額×1/6
  • 一般住宅用地(200㎡超):評価額×1/3

 

さらに、固定資産税と合わせて課税される都市計画税においても、土地に対して、

  • 小規模住宅用地(200㎡まで):評価額×1/3
  • 一般住宅用地(200㎡超):評価額×2/3

 

といった措置が適用されますが、住宅には減額措置はありません。

まとめ

総体的に環境問題への配慮が際立っており、今後もより一層カーボンニュートラルを意識した優遇措置が進む兆候です。

住まいは建物だけではなく設備や家電も関わりますが、これらも同様の動きが見られます。
省エネ性能の高い家は資産価値が高く、エネルギー消費量も抑えられるという利点があります。

これからは、単に不動産そのものの価格だけではなく、環境保護を見据えた税制や助成金、建築物の工法・部材も鑑みると、省エネ住宅の購入や新築が最大のメリットを生む時代です。

弊社リブワークでも省エネ性能の高い住宅、特に断熱性能の指標となるUA値(小さいほど性能が高い)は0.37と、国内ハウスメーカーではトップクラスの実績を基に、快適な住まい作りを提案しています。

省エネ性能に関して相談したい場合は、当サイトで紹介している建築士、または弊社リブワークのインハウスデザイナーへ、遠慮なくご相談ください。

 

補足

本記事では、令和4年度税制改正に関して一部を紹介したに過ぎず、情報の正確性には努めていますが、その内容を担保するものではなく、一切の責任は負いません。
具体的な相談は、担当の建築士、税理士、会計士などへ、お問い合わせください。